考える力・学び

子どもがAIの答えを鵜呑みにしないか心配。疑う力は育てられる?授業研究と「間違い探し」の根拠

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わかっている度 ★★☆ 中研究8本・公的指針1件を整理
新聞を虫めがねでのぞいている様子
Photo: Flazingo Photos / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品・教材の紹介はしていません。出典は末尾)。

AIの答えをそのまま宿題に写していないか。もっともらしい間違いを信じてしまわないか。そう心配になるのは自然なことです。結論から言うと、情報を確かめる力は「教えれば伸びる」という研究があります。ただ、AIの答えに絞って子どもで試した研究はまだ少なく、わかっていることと、わかっていないことがはっきり分かれます。

3行でわかる

  1. アメリカの高校生3,446人の調査では、3分の2がウェブサイト上のニュース記事と広告を見分けられませんでした。見分ける力は、放っておいて自然に身につくものではなさそうです。
  2. ネットの情報の確かめ方を1時間の授業6回で教えた高校では、教えなかったクラスより、情報の信頼性を判断する力がはっきり伸びました。
  3. 「AIにわざと間違えさせて親子で探す」遊びそのものを試した研究は、調べた範囲では見つかりませんでした。近い研究では、間違いを見せるだけでは効果が弱く、「なぜ間違いか」を説明させると効果が上がりました。

01 結論から言うと子どもの「AIを疑う力」は教えて伸ばせる?

情報を確かめる力は、教えれば伸びるという研究がそろっています。ただし対象は主に中高生や大学生で、ネットの情報全般の確かめ方です。AIの答えに絞って子どもに教えた効果は、まだ確かめられていません。

ここでいう「AIを疑う力」は、研究の言葉では批判的思考や、オンラインの情報を評価する力にあたります。AIを嫌うことではありません。「誰が言っているのか」「ほかの情報と合っているか」を確かめてから使う力です。

この力を教える授業の研究は、たくさんあります。批判的思考を教える授業の効果をまとめた分析では、効果は小さめから中くらいでしたが、小学校から大人まで、どの段階でもプラスでした。一方で、チャットAIの答えを子どもに確かめさせる授業の研究は、まだほとんどありません。

AIそのものを子どもがどう受け止めているかは、子どもはAIをどう理解している?の記事でも整理しています。

02 研究とデータでわかっていること子どもはAIをどれくらい信じ、教えると何が変わる?

幼い子でも、前に間違えた機械は信じにくくなる傾向がありました。一方、高校生の多くはネットの情報の確かさを見分けられていません。確かめ方を教える授業は、回数を重ねるほど効果が大きい傾向がありました。

3分の2ニュース記事と広告を見分けられなかった高校生の割合(米国3,446人、2021年発表)
1時間×6回確かめ方の授業で、判断する力が伸びた(米国の高校生、2022年発表)
d=0.37メディアリテラシー教育51件の平均効果。対象の年齢で差はなかった(2012年)
g=0.136「間違った例」から学ぶ方法の平均効果。弱いがプラス(42論文、2025年)

何もしないと、見分けられない

Breakstoneら / スタンフォード大学(2021)[1]

ネットにつながった状態で課題を解いた高校生3,446人のうち、3分の2がサイトのトップページでニュース記事と広告を見分けられませんでした。半数以上が、出どころのわからない動画を「強い証拠」と答えました。

対象: 米国の高校生3,446人(全米の高校生の構成に近い集団) / 限界: AIの答えではなく、ウェブサイトや動画を評価する課題です。

教えると伸びる

Wineburgら(2022)[2]

知らないサイトを読み込む前に、いったん離れて「誰が書いているのか」をほかのサイトで調べる方法(ラテラルリーディング=横に読む)を、1時間の授業6回、3か月かけて教えました。教えたクラスの生徒271人は、通常授業の生徒228人より、ネットの情報の信頼性を判断する力がはっきり伸びました。

対象: 米国の都市部の学区の高校生 / 限界: 方法はプロのファクトチェッカーの調べ方がもとです。AIの答えを確かめる課題ではありません。

Jeongら(2012)[3]

メディアリテラシー教育51件をまとめた分析で、平均の効果は d=0.37 のプラスでした。授業の回数が多いほど効果が大きく、対象の年齢によって効果は変わりませんでした。

対象: 子どもから大人までを含む51件の教育プログラム / 限界: 測った結果はメディアの知識・批判的な見方・態度などで、偽情報を見抜く力だけではありません。

Abramiら(2015)[4]

批判的思考を教える授業の効果341件をまとめた分析で、平均の効果は g=0.30 のプラスでした。とくに、話し合いの機会、現実にある問題や例を使うこと、大人がそばで手ほどきすることに効果がありました。

対象: 小学校から大人までの、実験に近い比べ方をした研究 / 限界: 研究どうしの結果のばらつきが大きく、どの方法でも同じ効果が出るわけではありません。

子どもはAIをどう信じているか

Girouard-Hallam・Danovitch(2022)[5]

4〜5歳と7〜8歳を比べると、年齢が上がるほど、事実を聞く質問では音声アシスタントの答えを信じ、身近な人についての質問では人の答えを信じる傾向がありました。

対象: 米国の4〜5歳と7〜8歳(各研究80人) / 限界: 参加者は白人・中流以上の家庭が中心です。家に音声アシスタントがあるかどうかは、選び方と関係していませんでした。

Gengら(2025)[6]

3〜4歳の子どもは、音声アシスタントやロボットが前に正しかったか間違えたかで、信じるかどうかを変えていました。一方、人に対しては、前に間違えていても信じる傾向がありました。

対象: 中国の3〜4歳180人 / 限界: 新しい言葉の名前を教わる実験で、チャットAIではありません。

Flanaganら(2024)[7]

4〜7歳では、年齢が上の子ほど、相手(人やロボット)が間違えたあとに疑うようになり、その疑い方は大人より強いほどでした。ただし、ロボットが謝ると、年上の子はロボットを長く信じ続けました。

対象: 米国の4〜7歳168人と大人168人 / 限界: ことば当てゲームでの実験です。

「間違い探し」に近い研究

Alemdagら(2025)[8]

間違った解き方の例を見せて学ぶ方法の研究42本(効果177件)をまとめた分析で、正しい例や問題演習と比べた効果は g=0.136 と、弱いながらプラスでした。間違いについて自分で説明させたり、説明を添えたりすると、説明なしより学びが大きくなりました。

対象: 実験研究42本 / 限界: 算数・数学などの教科の学習が中心で、AIの答えの間違いを探す活動ではありません。

日本では、文部科学省のガイドライン(2024年改訂)が、基本的な考え方の1つに「生成AIの存在を踏まえた情報活用能力の育成強化」を挙げています[9]。

方法ごとの根拠の強さ(SEADICEが上の研究を整理)

方法研究の結果主な対象わかっている度
確かめ方(横に読む)を教える6回の授業で判断力が伸びた高校生★★☆
メディアリテラシー教育平均 d=0.37。回数が多いほど効果大子ども〜大人★★★
話し合い・現実の問題で考える批判的思考の授業は平均 g=0.30小学生〜大人★★★
間違った例から学ぶ平均 g=0.136。説明させると効果が上がる教科の学習★★☆
AIにわざと間違えさせて探す直接試した研究は見つからなかった—★☆☆

03 まだわかっていないことAIの答えに限ると、何がわかっていない?

チャットAIの答えを確かめる方法を小中学生に教え、効果を比べた研究は、調べた範囲では見つかりませんでした。親子の「間違い探し」の効果も、直接は確かめられていません。

  • チャットAIの答えを確かめる授業を、小中学生で効果を比べた研究は、調べた範囲では見つからなかった。
  • 「AIにわざと間違えさせて親子で探す」活動の効果を、直接試した研究も見つからなかった。
  • 確かめ方の授業の研究は、主に米国の高校生と大学生。日本の小学生にそのまま当てはまるかはわからない。
  • 授業の効果がどれくらい長続きするか、家庭の声かけでも同じ効果が出るかはわかっていない。
  • 疑う練習をした結果、正しい情報まで信じなくなることがあるかは、今回調べた研究では扱っていない。

04 家庭で今日からできること家でAIを疑う力を育てるには、何から始める?

研究で効果のあった要素は、「誰が言っているかを別の場所で調べる」「なぜ間違いかを話す」「回数を重ねる」の3つです。お金をかけず、AIを使うときの会話に混ぜられます。

1

「それ、ほかでも同じこと言ってる?」と聞く

AIの答えを使う前に、別の情報源(教科書・図鑑・公的機関のページ)で1つだけ確かめます。高校生で効果のあった「横に読む」方法を、家庭向けに小さくしたものです。

目安 小学校高学年〜。1回5〜10分

2

間違い探しは「なぜ間違い?」まで話す

AIの答えに間違いを見つけたら、見つけて終わりにせず「どこが、なぜ違うのか」を子どもの言葉で説明してもらいます。間違った例から学ぶ研究では、説明があると効果が上がりました。

目安 小学生〜。1回5分

3

子どもの本物の疑問で、一緒に確かめる

練習用の問題より、子どもが本当に知りたいこと(好きな動物・ゲームの仕組みなど)をAIに聞き、親子で答え合わせをします。話し合いと現実の問題は、批判的思考の授業で効果のあった要素です。

目安 5歳〜。週1回から

4

1回で終わらせず、短く何度も

メディアリテラシー教育は、回数が多いほど効果が大きい傾向でした。特別な時間を取るより、AIを使うたびに1問だけ確かめる習慣にします。

目安 全年齢。AIを使うたびに1問

AIが間違えたときにどうするかは、子ども向けのれんしゅうAIで、場面ごとに親子で練習できます(AIを呼び出さず、入力も送りません)。

答えをそのまま写すより、ヒントとして使う方が学びを損ねにくいことは、宿題にAIを使わせると考える力は落ちる?で詳しく書いています。親の関わり方とAIを使う力の関係はAIを使える子と使えない子で、学力の差は広がる?、テストで測りにくい力全般はAI時代に伸ばしたい子どもの力は何?も参考にしてください。

05よくある質問

AIを疑う練習は何歳からできる?

3〜4歳でも、前に間違えた音声アシスタントやロボットを信じにくくなる傾向がありました。ただ、ネットの情報の確かめ方を教えた授業の研究は、主に高校生と大学生が対象です。小さいうちは「AIも間違えることがある」と一緒に確かめる経験から、高学年以降は「ほかでも確かめる」方法へ、と段階を分けるのが研究と合う考え方です。何歳から使わせるかは子どもにAIは何歳から?で整理しています。

「AIにわざと間違えさせて親子で探す」遊びは効果がある?

その遊びそのものを試した研究は、調べた範囲では見つかりませんでした。近い「間違った例から学ぶ」研究42本では、効果は弱いながらプラス(g=0.136)で、なぜ間違いかを説明させると効果が上がりました。やるなら、見つけて終わりにせず、理由まで話すのがおすすめです。

学校ではAIの使い方を教えてくれないの?

文部科学省のガイドライン(2024年改訂)は、基本的な考え方の1つに「生成AIの存在を踏まえた情報活用能力の育成強化」を挙げています。ただ、学校で何をどこまで教えるかは学校によって違います。家庭でAIを使う場面は、確かめる練習のよい機会になります。

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出典

  1. Breakstone, J., Smith, M., Wineburg, S., Rapaport, A., Carle, J., Garland, M., & Saavedra, A. (2021). Students' Civic Online Reasoning: A National Portrait. Educational Researcher, 50(8), 505-515. https://doi.org/10.3102/0013189X211017495
  2. Wineburg, S., Breakstone, J., McGrew, S., Smith, M. D., & Ortega, T. (2022). Lateral reading on the open Internet: A district-wide field study in high school government classes. Journal of Educational Psychology, 114(5), 893-909. https://doi.org/10.1037/edu0000740
  3. Jeong, S.-H., Cho, H., & Hwang, Y. (2012). Media Literacy Interventions: A Meta-Analytic Review. Journal of Communication, 62(3), 454-472. https://doi.org/10.1111/j.1460-2466.2012.01643.x
  4. Abrami, P. C., Bernard, R. M., Borokhovski, E., Waddington, D. I., Wade, C. A., & Persson, T. (2015). Strategies for Teaching Students to Think Critically: A Meta-Analysis. Review of Educational Research, 85(2), 275-314. https://doi.org/10.3102/0034654314551063
  5. Girouard-Hallam, L. N., & Danovitch, J. H. (2022). Children's trust in and learning from voice assistants. Developmental Psychology, 58(4), 646-661. https://doi.org/10.1037/dev0001318
  6. Geng, Z., Zeng, B., & Huang, J. (2025). Living in a digital ecology: Children's selective trust in technological informants. Journal of Applied Developmental Psychology, 101, 101872. https://doi.org/10.1016/j.appdev.2025.101872
  7. Flanagan, T., Georgiou, N. C., Scassellati, B., & Kushnir, T. (2024). School-age children are more skeptical of inaccurate robots than adults. Cognition, 249, 105814. https://doi.org/10.1016/j.cognition.2024.105814
  8. Alemdag, E., Eichelmann, A., & Narciss, S. (2025). A Framework for Learning From Erroneous Examples and Meta-Analysis of Empirical Research. Review of Educational Research. https://doi.org/10.3102/00346543251390901
  9. 文部科学省 (2024). 初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0). https://www.mext.go.jp/zyoukatsu/ai/about.html