習い事をすぐ辞める。続けないと将来の役に立たない?研究でわかっていること

始めてすぐ「もうやめたい」と言い出す。習い事やスポーツが長続きしない我が子に、将来困るのではと不安になる親は少なくありません。研究では、スポーツも音楽も、思春期にかけて多くの子が辞めていくのは珍しいことではないとわかっています。一方で、興味を持てる活動を組み合わせて続けられた子どもに、良い関連を示す調査もあります。
3行でわかる
- オーストラリアで約4,000人を追跡した調査では、10歳から12歳までに約3割、12歳から14歳までにさらに約3割の子どもがスポーツをやめていました(2020年)。
- 音楽活動も、始めた子どものうち約半数が17歳までにやめており、やめる時期は15〜17歳に集中していたという、英国・ドイツの3,303人を対象にした調査があります(2021年)。
- 家庭に困難を抱える生徒の中で、スポーツと学校クラブの両方を11年生まで続けていたグループは、その後の大学進学率が同じ境遇の生徒全体より高かったという米国の追跡調査があります(2008年)。
01結論から言うと
多くの子どもが思春期にかけて習い事やスポーツをやめていくのは、よくあることで特別ではありません。辞めること自体が将来に悪影響を与えるという直接の証拠は、今回の調査では見つかりませんでした。
「この子は何をやっても続かない」と心配になる気持ちはよくわかりますが、研究では、思春期に差しかかる時期に活動をやめる子どもが数多く確認されています。
一方で、興味を持てる活動を無理なく複数組み合わせて続けられていた子どもに、進学などの面で良い関連を示した研究もあります。大切なのは「辞めたかどうか」より「今、何に関心を持てているか」のようです。
02研究とデータでわかっていること
スポーツも音楽も、思春期にかけて半数近くの子どもが活動をやめていくことが、複数の追跡調査でわかっています。
Vella・Schweickle・Sutcliffe(2020)[1]
オーストラリアの縦断研究(Longitudinal Study of Australian Children)のデータを使い、10歳時点でスポーツをしていた3,013人を追跡した研究です。12歳までに29.7%が、さらに12歳時点でスポーツをしていた2,016人のうち33.3%が14歳までにスポーツをやめていました。やめた理由としては、けが、本人の内発的なプレッシャー、親やコーチなど周囲からの圧力、時間や費用などの不足、他にやりたいことが増えたことが挙げられています。
対象: オーストラリアの子ども4,159人(10〜14歳) / 限界: やめた理由の内訳については具体的な数値は示されておらず、全体的な傾向の記述にとどまります。
Ruth・Müllensiefen(2021)[2]
英国・ドイツの中高生3,303人(10〜17歳)を対象に、音楽活動を続ける要因を調べた研究です。生存分析という手法で思春期を通じた音楽活動の継続・中断を追跡したところ、音楽に取り組んでいた生徒の約50%が17歳までに活動をやめており、やめる子が最も多かったのは15〜17歳の時期でした。家庭に音楽に親しむ環境がある生徒ほど、継続率が高い関連が見られました。
対象: 英国・ドイツの10〜17歳3,303人 / 限界: やめた具体的な理由についての情報は十分でなく、参加者には若年層がやや多い偏りがありました。
Peck・Roeser・Zarrett・Eccles(2008)[3]
米国メリーランド州の生徒1,060人を、中学2年の終わりごろから高校卒業後1〜3年まで追跡した研究です。家庭環境などで教育面の困難を多く抱える生徒グループに絞ると、大学進学率は全体で56%でしたが、そのうち11年生の時点でスポーツと学校クラブの両方に参加していた生徒では83%が大学に進学していました。活動の「量」よりも、どんな組み合わせの活動に参加していたかのパターンの方が、進学を予測する手がかりとして有効という結果でした。
対象: 米国の生徒1,060人(教育面で困難を抱えるグループに限定した分析) / 限界: 活動への参加と進学の関連を見た観察研究で、活動を続けたこと自体が進学の原因と証明するものではありません。
03まだわかっていないこと
活動を続けさせることと将来の成果の関係は「関連」が示されているだけで、辞めさせない方がよいと断定できる証拠は今回の調査では見つかりませんでした。
- Peckらの研究が示した「83%」は、教育面で困難を抱える生徒グループの中での関連であり、継続自体が進学の直接の原因かどうかまでは示されていません。
- 興味を失った活動を無理に続けさせることが、子どもにとってよい効果を持つのか悪い効果を持つのかを直接比較した研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
- 紹介した研究はいずれも欧米が対象で、月謝制の習い事や塾との両立が一般的な日本の家庭にそのまま当てはまるかは分かっていません。
04家庭で今日からできること
辞めたい理由を聞き、ゼロか継続かの二択ではなく他の選択肢も一緒に考えることが、研究の傾向とも合っています。
辞めたい理由を一度聞いてみる
「飽きた」「合わない」「他にやりたいことがある」など、理由によって対応は変わります。
目安 すべての年齢
「辞める」と「形を変えて続ける」を選択肢に入れる
完全にやめる以外に、頻度を減らす・教室を変えるなどの選択肢も一緒に検討します。
目安 小学生〜
スケジュールに無理がないか見直す
複数の活動と勉強の両立で疲れが出ていないか、週単位の予定を一緒に確認します。
目安 小学生〜
辞めることを失敗と捉えない
辞めた経験そのものを責めず、次に興味を持てそうなことを一緒に探す姿勢を伝えます。
目安 すべての年齢
05よくある質問
習い事をすぐ辞めると、将来困りますか?
研究では、多くの子どもが思春期にかけて活動を辞めていくことが示されており、辞めること自体が将来に悪影響を与えるという直接の証拠は、今回の調査では見つかりませんでした。
何歳ごろに辞めたくなる子が多いですか?
スポーツは10代前半、音楽は15〜17歳ごろに辞める子が多いという研究があります。思春期にかけて他の関心事が増える時期と重なっているようです。
続けさせたほうがいい場合はありますか?
興味を持てる活動を無理なく続けられている場合、進学面などで良い関連を示す研究もあります。ただし本人が苦痛を感じているのに無理に続けさせることの効果を示した研究は、今回の調査では見当たりませんでした。
出典
- Vella, S. A., Schweickle, M. J., & Sutcliffe, J. T. (2020). Prevalence of drop-out from organised extracurricular sports and associations with body fat percentage during childhood and adolescence. BMJ Open Sport & Exercise Medicine, 6(1), e000751. https://doi.org/10.1136/bmjsem-2020-000751
- Ruth, N., & Müllensiefen, D. (2021). Survival in a wicked world: Modeling sociocultural factors of dropping out of musical activity. PLOS ONE, 16(11), e0259105. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0259105
- Peck, S. C., Roeser, R. W., Zarrett, N., & Eccles, J. S. (2008). Exploring the Roles of Extracurricular Activity Quantity and Quality in the Educational Resilience of Vulnerable Adolescents. Journal of Social Issues, 64(1), 135-156. https://doi.org/10.1111/j.1540-4560.2008.00552.x