心と親子関係

いじめられた経験は大人になっても影響する?長く追った研究と、親が家でできる支え

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わかっている度 ★★★ 高研究7本を整理
人のいない学校の廊下
Photo: Matt Dempsey / CC BY-SA 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品・教材の紹介はしていません。出典は末尾)。

子どもがいじめられていたと知ったとき、「この傷は大人になっても残るのでは」と不安になる親は少なくありません。長く追跡した研究では、子どものころのいじめは18歳や20代の不安・うつと関連していました。ただ、影響が時間とともに薄れる部分もあります。親ができるのは、話せる場所になること、あたたかく関わり続けること、学校や相談先と一緒に動くことです。

3行でわかる

  1. 165件の研究をまとめた分析では、いじめられた子はうつになるオッズが約2.2倍でした。回数が多いほど高くなっていました。
  2. イギリスとアメリカの追跡研究では、いじめられた経験は18〜20代の心の不調と関連していました。一方で、不安への影響は5年後には確認されなかった研究もあります。
  3. いじめを誰にも話していない子は43.8%いました。家の大人に話した子は34.0%で、先生より多くいました。家が「話せる場所」であることが出発点です。

01 結論から言うといじめの影響は、大人になっても残る?

残ることがあります。子どものころのいじめは、18歳や20代の不安・うつ・自傷と関連していました。ただし全員ではなく、影響が薄れていく部分もあります。

いじめと心の不調の関係は、多くの研究で同じ方向の結果が出ています。165件の研究をまとめた分析は、いじめが不安やうつの原因になっている証拠は強いと結論づけています。

一方で、研究が示すのは「リスクが高まる」ということです。いじめられた子が必ず不調になるわけではありません。双子を比べた研究では、不安への影響は2年後には小さくなり、5年後には確認されませんでした。いじめを止めることと、その後に支えることの両方に意味があります。

不登校のはじまりに気づいたときの関わり方は、子どもが学校に行きたがらない。不登校のはじまりに親ができることで整理しています。

02 研究とデータでわかっていることいじめは、子どもの心にどれくらい長く影響する?

いじめられた子はうつ・不安のリスクが高く、その関連は成人期まで追跡した研究でも見られました。一方、双子の研究では不安への影響は5年で確認されなくなっていました。

約2.2倍いじめられた子がうつになるオッズ(165件の研究をまとめた分析、2017年)
約3.3倍月1回以上いじめられた子のうつのオッズ(同じ分析。月1回未満では約1.8倍)
43.8%いじめを誰にも話していなかった子(フィンランドの小4〜6・中2〜3、2020年)
34.0%家の大人に話した子。先生に話した子は20.6%(同じ研究)

Mooreら(2017)[1]

165件の研究をまとめた分析で、いじめられた子はうつになるオッズが2.21倍、不安が1.77倍でした。いじめが「ときどき」(月1回未満)だと1.78倍、「しばしば」(月1回以上)だと3.26倍で、回数が多いほど高くなっていました。

対象: 子どもと思春期の若者を対象にした縦断・横断研究 / 限界: オッズ比は「なりやすさ」の比で、確率が何倍になるかとは違います。横断研究も含みます。

Lereyaら(2015)[2]

イギリスとアメリカの2つの追跡研究で、子どものころ仲間にいじめられた子は、いじめも虐待も受けていない子に比べて、成人期はじめの不安・うつ・自傷などが多くなっていました。いじめだけを受けた子は、大人からの虐待だけを受けた子よりも心の不調が多く、オッズ比はイギリスで1.6、アメリカで3.8でした。

対象: イギリス4,026人(8〜13歳のいじめ、18歳で評価)、アメリカ1,420人(9〜16歳、19〜26歳で評価) / 限界: 観察研究で、家庭の事情などで調整してもほかの要因が残る可能性があります。

Singhamら(2017)[3]

双子どうしを比べて遺伝や家庭の影響を除いても、いじめは不安・うつなどに直接影響していました。ただし不安への影響は2年後には小さくなり、5年後には確認されませんでした。被害的な考えなど一部は5年後も残っていました。

対象: イギリス(イングランドとウェールズ)の双子11,108人、11〜16歳 / 限界: 追跡は16歳までで、大人になってからの影響はこの研究ではわかりません。

Blomqvistら(2020)[4]

いじめられていた子のうち、誰かに話していたのは55.4%でした。家の大人に話した子は34.0%で、担任の先生(20.6%)や学校のほかの大人(12.7%)より多くいました。女子、学年が低い子、いじめが長く続いている子ほど大人に話しやすい傾向がありました。

対象: フィンランドの4〜6年生と8〜9年生(日本の小4〜6・中2〜3にあたる)のうち、月2〜3回以上いじめられていた1,266人 / 限界: 本人の回答に基づく調査で、日本の学校にそのまま当てはまるとは限りません。

Gramaら(2024)[5]

158件の研究をまとめた分析で、親のあたたかさ(話を聞く・気持ちを受け止める関わり)が高い家庭の子ほど、いじめ被害が少ない関連がありました(相関 r=−0.14)。反対に、きつく責める関わりや過干渉は、被害の多さと関連していました。どれも関連の大きさは小さめでした。

対象: 18歳以下の子ども、合計約110万人 / 限界: ほとんどが一時点の調査で、親の関わりが原因か、いじめられたことで親の関わりが変わったのかは区別できません。

ネットのいじめについては、子どものサイバーいじめ、親はどう気づく?でサインと対策をまとめています。

03 まだわかっていないこと親の支えで、いじめの傷は小さくできる?

まだはっきりとはわかっていません。家族の支えが心の不調の少なさと関連した研究はありますが、男女で結果が分かれ、因果も確かめられていません。

  • 韓国の多文化家庭の子ども1,375家族を2011〜2019年の9回の調査で追った研究では、家族の支えが多いと、いじめられた女子のうつ症状は低めでした。一方、男子では家族の支えの多さにかかわらず、いじめが続くほどうつ症状が積み重なっていました[6]。
  • 親の関わりといじめの関係を調べた研究の多くは一時点の調査です。「親がこう関われば立ち直りやすい」と言い切れる実験的な研究は、ほとんどありません[5]。
  • 今回整理した研究の多くは、イギリス・アメリカ・北欧のものです。日本の子どもを大人まで追った研究は、今回の調査では見つかりませんでした。
  • このレビューが紹介するユネスコの2019年報告では、世界の子どもの3人に1人が過去30日にいじめを受けていました。ただ、いじめの定義や数え方は調査によって違います[7]。

04 家庭で今日からできることいじめに気づいたら、親は家で何をすればいい?

まず話を最後まで聞き、責めないこと。次に、子どもと相談しながら学校と動くこと。そして、いじめが終わったあとも様子を見守り続けることです。

1

「話してくれてよかった」と最初に伝える

いじめを誰にも話さない子は4割以上いました。「なんで言わなかったの」「やり返せばいい」より先に、話してくれたことを受け止めます。

目安 打ち明けられたその場で、最初の一言

2

何があったかをメモに残し、学校への相談を子どもと決める

日付・場所・誰に何をされたかを書き留めます。学校にどう伝えるかは子どもの希望を聞いて一緒に決めます。親が先回りしすぎる関わりは、被害の多さと関連していました。

目安 小学生〜高校生。1回10分ほど

3

いじめが終わっても、数か月は様子を見る

影響は時間とともに薄れる部分もありますが、残る部分もあります。眠れない・食べられない・外に出たがらない状態が続くときは、学校のスクールカウンセラーや、かかりつけの小児科、自治体の子育て相談窓口に相談します。

目安 いじめが止まってから少なくとも数か月

4

ふだんの会話で「家は安心できる場所」を保つ

いじめの話以外の雑談や、子どもの好きなことに付き合う時間を毎日少し作ります。親のあたたかい関わりは、学校のいじめとネットのいじめのどちらとも、被害の少なさと関連していました。

目安 毎日5〜10分

思春期で会話が減ってきたと感じるときは、思春期に入って子どもと会話が減ったも参考にしてください。

05よくある質問

いじめられた子は、みんな大人になっても苦しむの?

いいえ。研究が示すのは「心の不調のリスクが高まる」ということで、全員が不調になるわけではありません。イギリスの双子1万人以上の研究では、11歳時点の不安への影響は5年後には確認されませんでした。一方で、被害的な考えなど一部は5年後も残っていました。長く見守る価値はありますが、悲観しすぎる必要はありません。

子どもがいじめを親に話さないのはなぜ?

打ち明けない子はめずらしくありません。フィンランドの小中学生の研究では、いじめられた子の43.8%が誰にも話していませんでした。この論文は、先生が関わると状況が悪くなると心配して話さない子がいる可能性を、先行研究を引いて挙げています。話さないことを責めず、話しやすい雰囲気を作ることが先です。

親が学校に行って相手に直接言うべき?

研究で「これが一番よい」と決まった方法はありません。親が子どもの代わりに動きすぎる関わり(過干渉)は、いじめ被害と弱い関連がありました。まず子どもと何をしてほしいかを話し、学校の先生には事実を記録して相談するのが、子どもの気持ちを置き去りにしにくい進め方です。

ネットのいじめも同じように影響する?

ネットのいじめ(サイバーいじめ)も、心の不調との関連が報告されています。件数や心への影響はネットいじめはどれくらい起きている?で整理しています。親のあたたかい関わりは、学校のいじめとネットのいじめのどちらとも、被害の少なさと関連していました。

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出典

  1. Moore SE, Norman RE, Suetani S, Thomas HJ, Sly PD, Scott JG (2017). Consequences of bullying victimization in childhood and adolescence: A systematic review and meta-analysis. World Journal of Psychiatry, 7(1), 60. https://doi.org/10.5498/wjp.v7.i1.60
  2. Lereya ST, Copeland WE, Costello EJ, Wolke D (2015). Adult mental health consequences of peer bullying and maltreatment in childhood: two cohorts in two countries. The Lancet Psychiatry, 2(6), 524. https://doi.org/10.1016/S2215-0366(15)00165-0
  3. Singham T, Viding E, Schoeler T, Arseneault L, Ronald A, Cecil CM, McCrory E, Rijsdijk F, Pingault JB (2017). Concurrent and Longitudinal Contribution of Exposure to Bullying in Childhood to Mental Health: The Role of Vulnerability and Resilience. JAMA Psychiatry, 74(11), 1112–1119. https://doi.org/10.1001/jamapsychiatry.2017.2678
  4. Blomqvist K, Saarento-Zaprudin S, Salmivalli C (2020). Telling adults about one's plight as a victim of bullying: Student- and context-related factors predicting disclosure. Scandinavian Journal of Psychology, 61(1), 151–159. https://doi.org/10.1111/sjop.12521
  5. Grama DI, Georgescu RD, Coşa IM, Dobrean A (2024). Parental Risk and Protective Factors Associated with Bullying Victimization in Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-analysis. Clinical Child and Family Psychology Review, 27(3), 627–657. https://doi.org/10.1007/s10567-024-00473-8
  6. Son H, Jang H, Park H, Subramanian SV, Kim J (2025). Exploring the Trajectories of Depressive Symptoms Associated With Bullying Victimization: The Intersection of Gender and Family Support. Journal of Adolescence, 97(3), 746–757. https://doi.org/10.1002/jad.12450
  7. Armitage R (2021). Bullying in children: impact on child health. BMJ Paediatrics Open, 5(1), e000939. https://doi.org/10.1136/bmjpo-2020-000939