思春期に入って子どもと会話が減った。心配しなくていい理由を研究で見る

小学校高学年や中学生になった子どもが、急に口数を減らした。質問しても「別に」「普通」としか返ってこない。そんな変化に戸惑う親は少なくありません。実はこの変化、子どもの発達の過程でよく見られるもので、関わり方を間違えたサインとは限りません。
3行でわかる
- 親子の会話や親密さが思春期の入り口で一時的に減る傾向は、複数の研究で確認されています。
- 親子の対立も増えやすい時期ですが、年ごとの浮き沈みが大きく、一直線に悪化し続けるわけではありません。
- 「選択肢を示す」「指示の理由を伝える」など、自律性を尊重する関わり方が、子どもの心の健康を支えると分かっています。
01結論から言うと
思春期に親子の会話や近さが一時的に減るのは、発達の過程でよく見られる変化であり、関わり方が間違っているサインとは言い切れません。
思春期は、子どもが親から一歩距離を取り、友人関係や自分自身の世界を広げていく時期にあたります。会話の量が減ること自体は、自立に向かう過程のひとつとして研究でも報告されています。
ただし、対立の増え方や親密さの下がり方には個人差が大きく、親の関わり方によっても変わることが分かっています。「普通に起こりうる変化」と「対応したほうがよい変化」を分けて考えることが大切です。
02研究とデータでわかっていること
米国の縦断調査では、思春期前期にかけて親子の対立が増え、親密さがやや下がる傾向が確認されています。日本の調査では、関わり方次第で子どもの心の健康を支えられることも分かっています。
Marceauら(2014、米国)[1]
8.5歳から15.5歳までの7年間を追跡した調査で、父親と娘の対立は1年ごとに平均0.37ポイント増え、母親と息子の親密さは1年ごとに0.56ポイント下がる傾向が見られました。
対象: 男女計963人(米国、NICHD-SECCYDの縦断データ)/限界: 長期的な低下よりも年ごとの「浮き沈み」の方が大きく、相関関係であり原因は特定していません。
Nomaguchi・Allen(2023、米国)[2]
1,088組の親子を小学1年から15歳まで追跡したところ、母親が感じる対立は小学1年〜5年で7.8%、5年〜15歳でさらに7.9%増える傾向がありました。大学卒の母親では、増加がよりゆるやかでした。
対象: 米国の親子1,088組(NICHD-SECCYDの縦断データ)/限界: 母親の自己報告による対立の認識であり、子ども側の感じ方とは一致しない可能性があります。
田中ら(2023、日本)[3]
日本の母子408組を調べた研究では、母親が「選択肢を示す」「理由を説明する」など自律性を尊重する関わり方をするほど、子どもの基本的な心理的欲求が満たされ、抑うつ症状が少ない傾向が確認されました。
対象: 日本の母親と思春期の子ども408組、平均13.73歳/限界: 4か月間隔の2時点調査で、長期的な効果までは確認していません。相関関係です。
03まだわかっていないこと
思春期の会話減少がどの家庭にどんな影響を及ぼすか、父親との関係の変化については、まだ研究が少ないのが実情です。
- 上記の縦断研究はいずれも米国と日本の一部の家庭が対象で、文化や家庭環境による違いまでは分かっていません。
- 父親と子どもの会話や関係の変化を扱った研究は、母親と子どもの関係に比べてまだ少数です。
- スマートフォンやSNSの普及が、親子の会話の減り方にどう影響しているかは、まだ十分に調べられていません。
04家庭で今日からできること
無理に会話を増やそうとするより、選択肢を示す・理由を伝える・タイミングを待つ関わり方が、研究で支持されています。
ルールを一方的に決めず、選択肢を示す
門限や宿題のタイミングなどを「8時か9時、どっちがいい?」のように選べる形で示す。
目安 小学校高学年〜高校生
指示や注意に理由を一言添える
「先に宿題を」ではなく「後で疲れて集中できなくなるから、先にやっておこう」のように理由を伝える。
目安 全年齢
「別に」で終わっても、話しやすい場面を待つ
その場で聞き出そうとせず、車の中や夕食後、就寝前など、子どもが自然に話し始めやすい場面を待つ。
目安 中学生以降
05よくある質問
思春期に会話が減るのは、親との関係が悪いサインですか?
多くの場合そうではありません。研究では、思春期の対立の増加や親密さの低下は一時的な変動が大きく、関わり方が間違っているサインとは言い切れないとされています。
反抗期はいつまで続きますか?
研究によって幅がありますが、対立は思春期半ばから後半にかけて落ち着く傾向が報告されています。個人差が大きく、一律の年齢で区切れるものではありません。
子どもが「別に」としか言わないとき、どう声をかければいいですか?
無理に聞き出そうとせず、選択肢を示したり、指示の理由を伝えたりする関わり方が、子どもの心の健康を支えると研究で示されています。
出典
- Marceau, K., Ram, N., & Susman, E. J. (2014). Development and Lability in the Parent-Child Relationship During Adolescence: Associations With Pubertal Timing and Tempo. Journal of Research on Adolescence, 25(3), 474-489. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4550307
- Nomaguchi, K., & Allen, A. (2023). Mother-Child Relationship Quality from Preschool to Adolescence: Variation by Maternal Education. Personal Relationships, 30(2), 399-418. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10361254
- Tanaka, A., Tamura, A., Ishii, R., Ishikawa, S., Nakazato, N., Ohtani, K., Sakaki, M., Suzuki, T., & Murayama, K. (2023). Longitudinal Association between Maternal Autonomy Support and Controlling Parenting and Adolescents' Depressive Symptoms. Journal of Youth and Adolescence, 52(5), 1058-1073. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9851735