日本の子どもは自己肯定感が低いって本当?国際比較の数字と、読むときの注意

「日本の子どもは自己肯定感が低い」。ニュースや学校の便りで、この言葉を見て心配になった親は多いと思います。国の国際比較調査では、たしかに日本は5か国の中で最も低い結果でした。ただ、その差は5年前より小さくなり、質問への答え方の文化差も研究で指摘されています。数字の中身と、読むときの注意を整理しました。
3行でわかる
- こども家庭庁の2023年度調査(13〜29歳)で「自分自身に満足している」と答えた日本の割合は57.4%。ほかの4か国(72.3〜75.6%)より低い結果でした。
- ただし2018年度の45.1%から12.3ポイント上がり、他国との差は縮まっています。13〜14歳は73.5%と、年上の世代より高めでした。
- 自尊感情の国際比較は、答え方のくせ(真ん中を選びやすい等)や質問文の受け取り方の違いで差が出ることが研究で指摘されています。数字だけで「日本の子はだめ」とは言えません。
01 結論から言うと日本の子どもの自己肯定感は、本当に低い?
国の国際比較調査では、日本のこども・若者が「自分に満足している」と答える割合は他国より低い結果が続いています。ただし差は縮まっており、答え方の文化差もあるため、「低い」の大きさは見出しほど単純ではありません。
比べられているのは、アンケートの「私は、自分自身に満足している」という1つの質問への答えです。心理学で自尊感情(自分を価値ある存在だと感じる気持ち)を測るときに最もよく使われる尺度の、1つの項目に対応しています。
一方で、同じ調査では日本の8割が「親から愛されている(大切にされている)と思う」と答えています。「自分に満足」が低いことと、「家庭で大切にされていない」ことは別の話です。
02 研究とデータでわかっていること国際比較の調査では、どんな数字が出ている?
こども家庭庁の2023年度調査では、日本の13〜29歳の57.4%が「自分自身に満足している」と答えました。アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデンは72.3〜75.6%で、日本だけが低い結果でした。
こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査」(2023年度)[1][2]
「自分自身に満足している」に「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた割合は、日本57.4%、アメリカ73.2%、ドイツ73.9%、フランス75.6%、スウェーデン72.3%でした。日本は2018年度より12.3ポイント高く、他国はむしろ下がる傾向で、差は縮まっていました。
対象: 5か国の13〜29歳、各国約1,000人(日本1,089人)、2023年11〜12月のインターネット調査 / 限界: 調査会社に登録したモニターへの調査で、国全体の縮図とは限りません。
同じ報告書の分析で、北海道大学の加藤弘通氏は、国による差の大きさ(効果量)が2018年度の0.173から2023年度は0.045へ小さくなったと報告しています[1]。日本の若者は「依然として自尊感情は低いが、その差は縮小傾向にある」とまとめています。
年齢で見るとどう違う? 報告書の資料編の表から、日本の年齢別に「そう思う」と「どちらかといえばそう思う」を足すと、次のようになりました(SEADICEが表の数字を足して整理したものです)。
| 日本の年齢 | 2018年度 | 2023年度 |
|---|---|---|
| 13〜14歳 | 56.8% | 73.5% |
| 15〜19歳 | 48.0% | 59.8% |
| 20〜24歳 | 45.0% | 57.0% |
| 25〜29歳 | 39.3% | 51.2% |
どの年代も2023年度のほうが高く、年齢が上がるほど低くなっていました。ただし13〜14歳は人数が少なく(2023年度87人)、数字が揺れやすい点に注意が必要です。
加藤氏の分析(13〜15歳で区切った平均点)では、2023年度は13〜15歳だけが他の年代より少し高く、16歳以降は横ばいでした。2018年度からの上昇がはっきり確かめられたのは16歳以上で、13〜15歳では意味のある変化は見られませんでした[1]。
小塩真司ら(2014)教育心理学研究 [3]
日本の論文256本(48,927人)のメタ分析で、大学生と比べて中高生は自尊感情の平均が低く、成人以降は高い傾向がありました。中高生と成人では、最近の調査ほど平均が下がっていました。
対象: 1980〜2013年に日本の査読誌で報告された、ローゼンバーグの自尊感情尺度の平均値 / 限界: 調査ごとに対象や選択肢の数が違い、選択肢の数(件法)でも平均値が変わっていました。
国際比較の数字を読むときの注意点は?
自尊感情の国際比較は、答え方のくせや質問文の受け取り方の違いに左右されることが、研究で指摘されています。数字の差は「自分を肯定する気持ちの差」だけでなく「答え方の差」も含みます。
Schmitt & Allik(2005)Journal of Personality and Social Psychology [4]
53か国・16,998人に同じ自尊感情の尺度を28言語で実施したところ、すべての国の平均が尺度の理論上の中間点を上回りました。集団を重んじる文化ほど「真ん中寄りに答える」くせが多く、否定文の質問は国によって受け取られ方が違いました。著者らは、この尺度で国どうしを直接比べることには限界があると述べています。
対象: 53か国の16,998人 / 限界: 子どもの年齢層に絞った比較ではありません。
Heine ら(1999)Psychological Review [5]
それまでの研究を整理した論文で、日本の文化では自分を高く評価しようとする傾向の証拠が少なく、むしろ自分の足りない所に目を向ける「自己批判的」な傾向が特徴的だと論じました。「自分を肯定したい」という欲求の形は、文化によって違うという主張です。
対象: 既存研究のレビュー(理論論文) / 限界: 新しくデータを集めた研究ではなく、研究の整理と解釈を示した論文です。
こども家庭庁の報告書でも、京都大学の内田由紀子氏は別の指標(協調的幸福感)の国の差について、「高い点数を選びやすいかどうか(反応バイアス)」の影響も大きいと指摘しています[1]。読むときは次の3点を頭に置くと、数字に振り回されにくくなります。
- 1つの質問の結果: 「自分に満足しているか」の1問で、自己肯定感のすべてを測ったものではない。
- 答え方の文化差: 集団を重んじる文化では、真ん中寄りに答えやすい傾向が研究で指摘されている。
- 年齢の幅: 調査の対象は13〜29歳。小学生の数字ではなく、29歳までをまとめた割合。
03 まだわかっていないこと自己肯定感は、思春期に下がるもの?
思春期に自尊感情が下がるかどうかは、研究によって結果が分かれています。また、日本の数字の低さが子どもの困りごとをどれだけ表しているのかも、まだはっきりしていません。
- Robins ら(2002)は9〜90歳の約33万人のネット調査で、子ども期に高く、思春期に下がり、大人になって上がる形を示しました[6]。一方、同じ人を追った研究を集めた Orth ら(2018)のメタ分析では、4〜11歳で上がり、11〜15歳は横ばい、その後30歳まで大きく上がっていました[7]。思春期に「下がる」のか「伸びが止まる」のかは、調べ方で答えが変わります。
- 日本の13〜29歳の「自分への満足」がなぜ2018年度から上がったのかは、報告書でも理由まで確かめられていません。
- 加藤氏の分析では、日本の若者の自尊感情は家庭よりも学校の要因と強く関連し、学校生活への満足感は5か国で最も低い結果でした[1]。ただしこれは関連で、学校が原因だと確かめたものではありません。
04 家庭で今日からできること「自己肯定感が低い」と聞いて、親は何をすればいい?
国の平均の数字で、わが子を判断しないことが出発点です。数字を気にするより、子どもが「役に立てた」「大切にされている」と感じる場面と、学校での様子に目を向けるほうが、調査の分析結果に沿っています。
平均の数字を、わが子に当てはめない
「日本の子は自己肯定感が低いから」と心配するより、目の前の子が最近楽しそうか、困っていないかを見ます。控えめに答えることと、困っていることは別です。
目安 全年齢・今日から
「助かったよ」を1日1回、言葉にする
日本の若者は「人の役に立っている」と感じることが自分への満足と結びつきやすいと分析されています(その結びつきは以前の調査より弱まっていました)。お手伝いや弟妹の世話に「ありがとう、助かった」と具体的に返します。
目安 1日1回・10秒
学校での「居心地」を聞いてみる
成績より「学校で安心できる場所はある?」「話せる人はいる?」を聞きます。気になる様子が続くときは、担任やスクールカウンセラーに相談できます。
目安 週1回・夕食時など
褒め方・比べ方は、関わり方の記事で
大げさな褒め言葉の影響は褒め方の記事、きょうだいとの比べ方はきょうだい比較の記事、クラスでの順位の影響は「井の中の蛙効果」の記事にまとめています。言いかえに迷ったら声かけの言いかえ帳も使えます。
目安 気になったときに
05よくある質問
日本の子どもの自己肯定感は、世界で一番低いの?
こども家庭庁の2023年度調査は、日本・アメリカ・ドイツ・フランス・スウェーデンの5か国の比較で、その中では日本が最も低い結果でした。世界の全部の国と比べた調査ではありません。
自己肯定感が低いと、何か問題があるの?
同じ調査の分析では、日本でも他国でも、自分への満足が高い人ほど生活満足度や幸福感が高い傾向がありました。ただしこれは関連で、どちらが原因かはわかりません。気分の落ち込みが続くなど気になる場合は、かかりつけの小児科や自治体の子育て相談窓口に相談できます。
小学生の自己肯定感の国際比較はある?
この記事で紹介したこども家庭庁の調査は13歳以上が対象です。小学生だけを対象にした同じ質問の5か国比較は、この記事では確認できていません。
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出典
- こども家庭庁 (2024). 我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)報告書(第3部 加藤弘通「日本の若者の自尊感情の特徴とその改善に向けての提言」、内田由紀子の分析を含む). https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/d0d674d3-bf0a-4552-847c-e9af2c596d4e/3b48b9f7/20240620_policies_kodomo-research_02.pdf
- こども家庭庁 (2024). 令和6年版こども白書 特集③ 日本のこども・若者の意識の現状. https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/0357b0f6-8b14-47fc-83eb-2654172c2803/282e2d76/20241009_resources_white-paper_r06_15.pdf
- 小塩真司・岡田涼・茂垣まどか・並川努・脇田貴文 (2014). 自尊感情平均値に及ぼす年齢と調査年の影響:Rosenbergの自尊感情尺度日本語版のメタ分析. 教育心理学研究, 62(4), 273-282. https://doi.org/10.5926/jjep.62.273
- Schmitt DP, Allik J (2005). Simultaneous administration of the Rosenberg Self-Esteem Scale in 53 nations: exploring the universal and culture-specific features of global self-esteem. Journal of Personality and Social Psychology, 89(4), 623-642. https://doi.org/10.1037/0022-3514.89.4.623
- Heine SJ, Lehman DR, Markus HR, Kitayama S (1999). Is there a universal need for positive self-regard? Psychological Review, 106(4), 766-794. https://doi.org/10.1037/0033-295X.106.4.766
- Robins RW, Trzesniewski KH, Tracy JL, Gosling SD, Potter J (2002). Global self-esteem across the life span. Psychology and Aging, 17(3), 423-434. https://doi.org/10.1037/0882-7974.17.3.423
- Orth U, Erol RY, Luciano EC (2018). Development of self-esteem from age 4 to 94 years: A meta-analysis of longitudinal studies. Psychological Bulletin, 144(10), 1045-1080. https://doi.org/10.1037/bul0000161


