AI時代に学校の授業はどう変わる?各国の動きと、教室でAIを使った研究からわかること

学校でAIを使う授業が始まると聞いて、期待と不安が半々という親は多いはずです。授業がどう変わるかは、国によっても学校によっても違い、まだ形が決まっていません。ただ、教室でAIを使った研究からは、大事な分かれ目が1つ見えています。AIが「答えを渡す」か「ヒントにとどめる」かです。
3行でわかる
- 中国では2025年9月から、北京・上海など4都市が小学校から高校までの授業にAIを正式に取り入れた。授業の変化は国ごとに進み方が大きく違う。
- トルコの高校の実験では、答えをそのまま出すAIで練習した生徒は、AIなしのテストで点が17%低かった。ヒント型のAIではこの低下がほぼ消えた。
- 先生がAIを主に使うのは授業の準備や教材づくり。AIの授業が始まった中国の調査では先生のストレスが高まり、研修や学校の支えがそれを和らげていた。
01結論から言うと
授業がどう変わるかは、まだ決まっていない。研究からわかる分かれ目は、AIが答えを渡すかヒントにとどめるかだ。親は学校の方針と、子どもの使い方の両方を確かめておきたい。
AIを授業に取り入れる動きは、国によって速さも形も違います。AIそのものを学ぶ授業を作る国もあれば、AIの学習ソフトを使う国もあります。どの形が子どもの学びに良いのかを、長い期間で比べた研究はまだありません。
それでも、教室でAIを使った実験からは、手がかりが得られています。答えを出してくれるAIは、その場の成績を上げます。しかし、AIを取り上げた後のテストでは、点が下がることがありました。授業にAIがあるかどうかより、どう使うかが大事だと考えられます。
02研究とデータでわかっていること
答えを渡すAIは、AIなしで解く力を下げることがある。ヒント型のAIや、AIの学習ソフトは良い方向の結果が多いが、従来の学習ソフトより優れるとはまだ言えない。
Bastaniら(2025、PNAS)[1]
トルコの高校で、数学の練習にAIを使う実験をしました。生徒を3つに分けました。答えも出す普通のチャット型AIを使う組、先生が作ったヒントだけを出すよう設計したAIを使う組、AIを使わない組です。練習問題の成績は、AIなしの組と比べて、チャット型が48%、ヒント型が127%高くなりました。
ところが、AIなしで受けたテストでは結果が変わりました。チャット型の組は、AIを使わなかった組より点が17%低くなりました。AIに頼って答えを出していた分、自分で解く力が身につきにくかったと著者らは見ています。ヒント型の組では、この低下はほぼ見られませんでした。ただし、AIなしの組より点が上がったわけでもありません。
対象: トルコの高校1校の9〜11年生、約1,000人(約50クラス、90分の授業4回) / 限界: 1つの学校・数学の90分の授業4回での短い実験です。他の教科や年齢にそのまま当てはまるかはわかりません。
Létourneauら(2025、npj Science of Learning)システマティックレビュー [2]
小学校から高校までで、子ども一人ひとりに合わせて問題や説明を変えるAIの学習ソフト(AI個別学習)の研究を28本まとめました。学習や成績への効果は、おおむね良い方向でした。
ただし、AIを使わない従来型の学習ソフトと比べた研究では、差がはっきりしないものが多くありました。著者らは、良い結果の一部は、新しい道具を使う物珍しさによるものかもしれないと指摘しています。期間が1週間以下の研究が約半数で、著者らは、より長く大人数の研究が必要だとしています。
対象: 28本の研究、生徒4,597人(数学が半数以上) / 限界: 多くが無作為に分けない比較研究(準実験)で、研究によって比べる相手もばらばらです。
Li(2026、Frontiers in Psychology)[3]
この論文の紹介によると、中国では北京・上海・杭州・広州の4都市が最初の試行都市として、2025年9月から小学校から高校までの授業にAIを正式に取り入れました。論文は、シンガポール・韓国・米国も、AIの学習ソフトやAIデジタル教科書、AIの授業、先生の研修などを通じて、AIの基礎知識を学校教育に取り入れていると紹介しています。
研究では、この4都市の小中高の先生に、改革が始まった直後の2025年10月と、12月に調査をしました。12月の方が、AIの授業によるストレスと不安がどちらも高くなっていました。気持ちの面での支えや研修の支えがある先生ほど、ストレスが不安につながりにくい傾向でした。
対象: 中国4都市・24校の先生(10月553人、12月に同じ先生348人)、面接10人 / 限界: 先生の自己報告で、子どもの学びへの影響は調べていません。各国の動きは論文の背景説明からの紹介です。
Ciğerci・Uygun(2026、Frontiers in Psychology)[4]
トルコの小学校の先生302人に、算数の授業でのAIについて尋ねました。全体として、やや前向きな受け止めでした。AIをよく使う先生や、AIの研修を受けた先生ほど、前向きな傾向がありました。
面接では、先生はAIを主に授業の準備、教材づくり、図にして見せること、小テストやフィードバック、授業外の学びの手助けに使っていると話しました。一方で、子どもの年齢に合うか、学校の機器や通信の環境、個人情報、AIの答えの正確さ、先生自身の力量、子どもが用意された答えに頼りすぎることを心配していました。
対象: トルコの小学校の先生302人(2024〜25年度) / 限界: 先生の受け止めを調べた研究で、授業の効果は確かめていません。著者らも、前向きな気持ちが、教室で広く使われていることを意味するわけではないとしています。
研究から見えた「AIを使った授業」の形を、子どもの学びへの影響で整理すると次のとおりです。
- AIが答えをそのまま出す: 練習の成績は上がるが、AIなしのテストでは点が下がることがあった[1]。
- AIがヒントだけを出す: 練習の成績が上がり、AIなしのテストでの低下はほぼ見られなかった[1]。
- AIが問題や説明を一人ひとりに合わせる: おおむね良い方向。ただし従来の学習ソフトとの差ははっきりしない[2]。
- 先生がAIで授業を準備する: 教材づくりや準備の負担が減ると先生は感じていた。子どもへの効果はまだわからない[4]。
日本の文部科学省のガイドラインが、学校での生成AIの使い方をどう示しているかは、AIに読書感想文・自由研究を手伝わせるのはずるい?で整理しています。
03まだわかっていないこと
AIを使った授業を何年も受けた子どもがどう育つかは、まだわかっていない。どの国のやり方が良いかを比べた研究も、今回調べた範囲では見つからなかった。
- AIを使った授業の効果を、数年単位で追った研究はまだありません。紹介した実験も、数回の授業での結果です。
- AIそのものを学ぶ授業(中国など)が、子どもの学力や考える力にどう影響するかは、まだ調べられていません。紹介した中国の研究は、先生の気持ちを調べたものです。
- 小学生の授業でAIを使った効果を、AIなしの授業ときちんと比べた研究は少ないままです。
- 紹介した研究はトルコと中国のもので、日本の授業にそのまま当てはまるかはわかりません。
04家庭で今日からできること
学校がAIをどの場面で使うかを確かめ、家では「答えをもらった?ヒントをもらった?」と聞く。ときどきAIなしで説明してもらい、自分の力になっているかを一緒に確かめる。
学校のAIの方針を確かめる
学校だよりや保護者向けの文書で、どの授業で、何のためにAIを使うかを確認します。わからなければ、面談のときに「どの場面で使いますか」と先生に聞いてみます。
目安 学期に1回・5分
「答えをもらった?ヒントをもらった?」と聞く
授業や宿題でAIを使ったと聞いたら、責めずにこう聞きます。答えをもらっただけなら、次は「ヒントだけちょうだい」と頼む使い方を一緒に試します。
目安 小学校高学年〜高校生・週に1回
AIなしで1問説明してもらう
AIを使って解いた問題から1問選び、AIを見ずに親に説明してもらいます。説明できれば力になっています。詰まったら、そこがAIに頼っていたところです。
目安 週に1回・5分
AIの答えが間違っていた体験を話す
親がAIを使っていて、答えが間違っていたことがあれば話してみます。AIの答えはいつも正しいわけではない、と知っておくことが授業でも役に立ちます。
目安 全年齢・思い出したときに
AIに答えを聞くことと考える力の関係は宿題にAIを使わせると考える力は落ちる?、AIの学習ソフトの効果はAIの個別学習・AIチューターで本当に成績は上がる?で詳しく整理しています。AIを使える子と使えない子の差についてはAIを使える子と使えない子で、学力の差は広がる?もあわせてどうぞ。
05よくある質問
学校でAIを使うと、子どもは自分で考えなくなる?
使い方によります。トルコの高校の実験では、答えをそのまま出すAIで練習した生徒は、AIなしのテストで点が17%低くなりました。ヒントだけを出すよう設計したAIでは、この低下はほぼ見られませんでした。授業でAIを使うかどうかより、答えを渡すかヒントにとどめるかが分かれ目です。
AIの授業が増えると、先生はいらなくなる?
紹介した研究は、先生がいなくなるかを調べたものではありません。トルコの小学校の先生への調査では、先生はAIを主に授業の準備や教材づくりに使っていました。中国の研究では、AIの授業が始まって先生のストレスが高まり、研修や気持ちの面での支えがそれを和らげていました。AIを授業に生かすには、先生への支えが欠かせないと考えられます。
AIの個別学習ソフトは、普通の学習ソフトより効果がある?
はっきりしません。小中高のAI個別学習の研究28本をまとめたレビューでは、効果はおおむね良い方向でした。一方で、AIを使わない従来型の学習ソフトと比べた研究では、差がはっきりしないものが多くありました。研究の多くは期間が短く、人数も少なめです。
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出典
- Bastani, H., Bastani, O., Sungu, A., Ge, H., Kabakcı, Ö., & Mariman, R. (2025). Generative AI without guardrails can harm learning: Evidence from high school mathematics. Proceedings of the National Academy of Sciences, 122(26), e2422633122. https://doi.org/10.1073/pnas.2422633122
- Létourneau, A., Deslandes Martineau, M., Charland, P., Karran, J. A., Boasen, J., & Léger, P. M. (2025). A systematic review of AI-driven intelligent tutoring systems (ITS) in K-12 education. npj Science of Learning, 10, 29. https://doi.org/10.1038/s41539-025-00320-7
- Li, J. (2026). The first scene of artificial intelligence curriculum reform: longitudinal evidence on teachers' stress and multidimensional anxiety. Frontiers in Psychology, 17, 1835300. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1835300
- Ciğerci, F. M., & Uygun, N. (2026). Evaluation of primary school teachers' use and perceptions of artificial intelligence in primary school mathematics instruction: a mixed-methods study. Frontiers in Psychology, 17, 1741116. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2026.1741116


