子どもがAIに悩みを相談している。安全?人に相談するのとの違い

わが子が、親には言わない悩みをAIに打ち明けている。そう知って、ほっとする気持ちと心配な気持ちが入り混じる親は多いはずです。研究を見ると、AIは「話を聞いてもらう相手」としては役立つ面がある一方、危ない場面で大人につなぐ力はまだ足りません。
3行でわかる
- 米国の12〜21歳を対象にした2025年の調査では、19.2%がAIに心の悩みを相談していた。そのうち63.3%は、そのことを誰にも話していなかった。
- 子どもの危機を想定した相談で、友達役のAIが具体的な相談先を示せた返答は11.1%だった。
- AIへの相談を禁止するより、「AIに話したことも人に話していい」関係を作り、命に関わる悩みは人につなぐことが大切。
01結論から言うと
軽い悩みをAIに話すことは、多くの子が「役に立った」と感じている。ただ、深刻な悩みでは、AIは危険に気づけない・大人につなげないことがあり、人に代わる相談相手にはならない。
AIは24時間、否定せずに返事をくれます。子どもが「話しやすい」と感じるのは自然なことです。
一方で、AIは子どもの様子を見て周りの大人に知らせることはできません。研究では、子どもの無理な考えに賛成してしまう返答も見つかっています。安全かどうかは、何を相談するか、そして人ともつながっているかで変わります。
02研究とデータでわかっていること
AIへの心の相談はすでに珍しくなく、多くは役立ったと感じていた。しかし危機の場面での対応はAIの種類によって大きく差があり、友達役のAIほど弱かった。
McBainら(2026、JAMA Pediatrics)[1]
米国全体を代表するように選んだ12〜21歳を調べると、19.2%が気持ちの悩みでAIにアドバイスを求めていました。使った子の42.8%は月1回以上使い、91.7%が「ある程度」または「とても」役に立ったと答えています。一方で、使った子の63.3%は、AIに相談したことを誰にも話していませんでした。話した相手は友人(28.0%)が多く、親・先生・医師などの信頼できる大人は16.4%でした。
年齢別では18〜21歳の利用が最も多く(24.1%)、12〜14歳より多い傾向でした。
対象: 米国の12〜21歳1,009人(2025年11月、全国を代表する抽出) / 限界: 本人の回答による調査で、どのAIを使ったか、AIの助言が実際に役立ったかまでは確かめていません。
Brewsterら(2025、JAMA Network Open)[2]
利用者の多いAIチャット25個に、研究者が10代になりきって、自殺を考えている・性被害にあった・薬物を使ったという相談をしました。返答を小児科医2人が評価すると、専門家の助けが必要だと示せた返答は全体の60.0%、具体的な相談先を示せた返答は36.0%でした。友達役のAI(コンパニオン)では、助けが必要だと示せたのが40.0%、相談先を示せたのは11.1%でした。何でも聞ける汎用のAIでは、それぞれ90.0%と73.3%でした。
年齢を確かめる仕組みがあったのは25個中9個(36.0%)でした。自傷についての利用ルールを定めていたのは、汎用のAIでは10個すべて、友達役のAIでは15個中7個でした。
対象: 利用者の多いAIチャット25個との会話75件(2025年3〜7月に分析) / 限界: 作られた場面での試験で、AIの数も多くありません。AIは日々更新されるため、今の性能とは違う可能性があります。
Clark(2025、JMIR Mental Health)[3]
米国の大学医学部の研究者が、悩みを抱える架空の10代として、カウンセラー役・友達役などのAI10個に危うい提案をしました。全60場面のうち19場面(32%)で、AIはその提案に賛成しました。うつ状態の女の子の「1か月部屋にこもって誰とも会わない」という提案には、10個中9個が賛成しました。
10歳年上の先生に交際を迫られている14歳の場面では、10個中6個が「大人に相談しよう」と勧めませんでした。一方、コカインを使いたいという提案には、すべてのAIが反対しました。
対象: 公開されているAI10個と、架空の10代3人の相談場面 / 限界: 1人の研究者による小さな試験で、AIの選び方にも偏りがあり得ます。
Radezら(2021、European Child & Adolescent Psychiatry)レビュー [4]
子どもや10代が心の悩みで専門家に相談しない理由を、53本の研究から整理しました。76%の研究で、偏見への不安や恥ずかしさが壁として挙がっていました。68%の研究では、秘密が守られるか、知らない人を信頼できるかといった不安が挙がっていました。
専門家より家族や友人に話したいという気持ちが、専門家への相談の壁になっていた研究も24%ありました。いつでも匿名で話せるAIが選ばれやすい背景として、参考になる結果です。
対象: 対象者の平均年齢が18歳以下の53本の研究 / 限界: AIが広まる前の研究で、AIへの相談そのものは調べていません。
4つの研究を、親が知りたい点ごとに並べると次のようになります。
- いつでも話せるか: AIは24時間すぐ返事が来る。人は時間や場所が合わないこともある。
- 否定されないか: AIは否定しにくいが、その分、無理な考えに賛成してしまうことがある(60場面中19場面)[3]。
- 危険に気づけるか: 友達役のAIが、助けが必要だと示せたのは40.0%だった[2]。人は様子の変化にも気づける。
- 助けにつなげるか: AIは周りの大人や専門家を動かせない。人は一緒に相談先へ行ける。
03まだわかっていないこと
AIへの相談が子どもの心の状態を長い目で良くするのか悪くするのかは、まだ調べられていない。日本の子どものデータもない。
- AIに悩みを相談し続けた子が、数年後にどうなるかを追った研究
- 日本の子どもが、どのくらいAIに悩みを相談しているか
- AIの安全対策の更新で、危機の場面への対応がどこまで良くなったか
- AIに話すことが、人に相談するきっかけになるのか、人に相談しない理由になるのか
04家庭で今日からできること
AIへの相談を責めずに話題にし、「AIに話したことも人に話していい」と伝える。命に関わる悩みは、人につなぐ約束を先にしておく。
「AIに相談することもある?」と責めずに聞く
AIに相談した子の6割強は誰にも話していませんでした。叱られないとわかれば、子どもも話しやすくなると考えられます。親自身がAIに相談した経験を話すのも一つの方法です。
目安 小学校高学年〜 / 雑談の中で1分
「AIは賛成しすぎることがある」と伝えておく
AIは否定しないぶん、危ない考えにも賛成してしまうことがあります。「AIがいいと言っても、大きな決めごとは人にも聞こう」と前もって話しておきます。
目安 AIを使い始めるとき
命や体に関わる悩みは、人に話す約束をする
「死にたい」「誰かに体を傷つけられた」といった悩みは、AIだけで終わらせず、親や先生、保健室の先生に話すと約束します。親に言いにくいときの大人を、子どもと一緒に2〜3人決めておくと安心です。
目安 全年齢 / 5分
友達役のAIは、年齢のルールを一緒に確認する
研究では、友達役のAIほど危機の場面での対応が弱い傾向でした。使っているサービスの対象年齢を、子どもと一緒に確認してみましょう。
目安 中学生〜 / 10分
子どもの気分の落ち込みや眠れない様子が続くときは、一人で抱えず、かかりつけの小児科や自治体の子育て相談窓口に相談してください。
05よくある質問
子どもがAIに悩みを相談していたら、やめさせるべき?
すぐにやめさせる必要はありません。米国の調査では、AIに心の相談をした子の9割以上が「役に立った」と答えています。ただし6割強は誰にも話していませんでした。禁止するより、AIに話したことを人にも話せる関係を作る方が大切です。
AIは「死にたい」などの深刻な相談に正しく対応できる?
まだ安心はできません。小児科医が評価した研究では、子どもの危機を想定した相談で、医療など専門の助けが必要だと示せた返答は全体の60%でした。友達役のAIでは40%にとどまりました。命に関わる悩みは、必ず人につなげてください。
子どもはなぜ、親よりAIに相談するの?
研究では、子どもが専門家に相談しない理由として、偏見や恥ずかしさ、知らない人を信頼できるかへの不安がよく挙がっています。いつでも匿名で話せて否定されないAIは、その壁が低く感じられるのかもしれません。
AIに相談するのと、人に相談するのは何が違う?
AIは24時間すぐに返事をくれますが、子どもの危険に気づいて周りの大人を動かすことはできません。研究では、子どもの無理な考えにAIが賛成してしまう例もありました。人は時間がかかっても、止めることや助けにつなぐことができます。
出典
- McBain, R. K., Cantor, J. H., Breslau, J., et al. (2026). AI Chatbot Use and Disclosure for Mental Health Among US Adolescents and Young Adults. JAMA Pediatrics. https://doi.org/10.1001/jamapediatrics.2026.2015
- Brewster, R. C. L., Zahedivash, A., Tse, G., Bourgeois, F., & Hadland, S. E. (2025). Characteristics and Safety of Consumer Chatbots for Emergent Adolescent Health Concerns. JAMA Network Open, 8(10), e2539022. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.39022
- Clark, A. (2025). The Ability of AI Therapy Bots to Set Limits With Distressed Adolescents: Simulation-Based Comparison Study. JMIR Mental Health, 12, e78414. https://doi.org/10.2196/78414
- Radez, J., Reardon, T., Creswell, C., Lawrence, P. J., Evdoka-Burton, G., & Waite, P. (2021). Why do children and adolescents (not) seek and access professional help for their mental health problems? A systematic review of quantitative and qualitative studies. European Child & Adolescent Psychiatry, 30(2), 183-211. https://doi.org/10.1007/s00787-019-01469-4


