安全・プライバシー

AIの性的・暴力的な返答から子どもを守るには?フィルターと年齢制限だけでは防げない理由

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わかっている度 ★★☆ 中研究5本・メタ分析1件を整理出典照合済み(2026-10-06)
A hand is pressing keys on a laptop keyboard. The sleek device is positioned on a wooden desk, suggesting a focused work or study environmen
Photo: Shixart1985 / CC BY 2.0 / Wikimedia Commons
AIによる調査公開された研究と公的機関のデータ・指針をAIが調べて整理しました(商品・教材の紹介はしていません。出典は末尾)。

AIチャットが子どもに性的な話や暴力的な話をしてしまわないか。フィルターや年齢制限を設定すれば安心なのか。研究を見ると、技術的な対策は「すき間」が大きく、それだけでは防ぎきれません。設定に加えて、親子で話せる関係を作ることが守りの中心になります。

3行でわかる

  1. 米国の見守りアプリ利用家庭の子どもでも、AIチャットを使った日の15%に性的なロールプレイ(なりきり会話)が含まれていた。12歳未満ほど多い傾向だった。
  2. 人気のAIチャット25個のうち、年齢確認の仕組みがあったのは9個。家庭のフィルターも、ネットの性的な画像との接触をほとんど減らせていなかった。
  3. 設定は「最低限の柵」として使い、「変な返事が来たら話してね」と言える関係を作る。内容を話し合う関わりは、攻撃的・性的な行動が少ないことと小さく関連していた。

01結論から言うと

フィルターと年齢制限は役に立つが、それだけでは子どもを守りきれない。設定に加えて、困った返事を親に話せる関係と、AIの性質を教えることが必要だ。

人気のAIチャット25個を調べた研究では、17個が性的な内容、20個が暴力的な内容について利用規約でルールを設けていました。それでも、子どもが性的・暴力的なやりとりをしている実態が見つかっています。

理由は3つあります。年齢確認の多くは自己申告で、すり抜けられること。子どもが使うのは安全対策の弱い「友達役のAI」も多いこと。そして、性的・暴力的な話題は、子どもの側から持ちかけている場合もあることです。

02研究とデータでわかっていること

子どもはAIと性的・暴力的なやりとりをしていることがあり、年齢が低いほど割合が高かった。年齢確認やフィルターには大きなすき間があり、効果は限られていた。

15%AIチャットを使った日のうち、性的なロールプレイが含まれていた割合(米国の子ども、2025年)
25個中9個年齢確認の仕組みがあった人気のAIチャット(生年月日の入力を含む、2025年)
15世帯家庭のフィルターで、性的な画像に触れる子を1人減らすのに必要な世帯数(欧州の11〜16歳、2010年)
85%超16歳未満のSNS禁止から約3か月後も、対象のSNSを使っていた16歳未満(豪州、SNSの研究)

Maheux, Boeldtら(2026、Journal of Medical Internet Research)[1]

子どもがAIアプリに打ち込んだ文字を、AIと人の目で分類しました。AIを使った日(アプリごと)の62%は調べものなどの「道具」としての利用でした。一方で、15%に暴力的な内容、15%に性的なロールプレイ、8%に恋愛のロールプレイが含まれていました。

年齢による差もはっきりしていました。12歳未満では、AIを使った日の15〜24%に暴力的な内容、11〜19%に性的なロールプレイが含まれていました。16〜17歳では、暴力的な内容は6〜8%でした。友達役やロールプレイ向けのアプリほど、性的・暴力的な内容が多い傾向でした。

対象: 見守りアプリを入れていた米国の子ども3,363人(2025年1〜9月) / 限界: 子どもが打ち込んだ文字だけを調べており、AIがどう返事したかは見ていません。データは見守りアプリの会社の利用者で、共著者に同社の社員が含まれます。

Maheuxら(2026、JAMA Network Open)[2]

同じ見守りアプリのデータでは、AIアプリを使っていたのは15〜17歳で50.4%、10〜12歳で20.5%、8〜9歳で9.4%でした。10人以上が使っていたAIアプリ17個のうち7個は、友達・話し相手になることを売りにしたアプリでした。

対象: 米国の4〜17歳6,488人(2024年9月〜2025年4月) / 限界: 見守りアプリを使う家庭に限られ、米国の子ども全体を代表してはいません。

Brewsterら(2025、JAMA Network Open)[3]

利用者の多いAIチャット25個の利用規約などを調べると、年齢確認の仕組みがあったのは9個(36.0%)でした。この「年齢確認」には、生年月日を入力するだけのものも含まれます。性的な内容についてのルールがあったのは、何でも聞ける汎用のAIでは10個中9個、友達役のAIでは15個中8個でした。

対象: 月間訪問数の多いAIチャット25個(ポルノ目的のものは除外、2025年に分析) / 限界: 規約に書かれているかを調べたもので、実際にどこまで守られているかは別です。

Przybylski, Nash(2018、Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking)[4]

親が家庭でフィルターを使っているかと、子どもがネットで性的な画像・動画を見たかの関係を調べました。欧州のデータでは、フィルターのある家庭の方が見た割合はやや低いものの、1人を防ぐのに15世帯(画像の種類別では17〜77世帯)がフィルターを使う必要がありました。

事前に計画を登録した英国の調査では、フィルターに守る効果は確認されませんでした。暴力的な性的映像については、フィルターのある家庭の子の方が見たと答えた割合が高く(14%対7%)、研究者の予想と逆でした。

対象: 欧州の11〜16歳13,176組(2010年)と英国の14〜15歳1,004組(2018年)の親子 / 限界: AIが広まる前の研究で、ネット全体の性的な画像を対象にしています。関連を見た調査で、因果関係はわかりません。

Barnesら(2026、BMJ)[5]

オーストラリアで16歳未満のSNSアカウントを禁止した法律の、導入前と約3か月後を比べました。16歳未満の85%超が、対象のSNSを使っていました。年齢確認で最も多かったのは「年齢を聞かれるだけ」で、24〜39%でした(年齢層による)。偽のアカウントを使った子は15〜19%でした。

対象: オーストラリアの12〜17歳未満、追跡できた408人(2025〜2026年) / 限界: AIではなくSNSの研究で、人数が少なく、導入直後の短い期間しか見ていません。

Collierら(2016、Developmental Psychology)メタ分析 [6]

親のメディアへの関わり方と子どもの行動を、57本の研究からまとめました。時間や内容を制限する関わりは、全体として小さな良い関連にとどまりました(r=-0.06)。内容について話し合う関わりは、攻撃的な行動(r=-0.08)や性的な行動(r=-0.06)が少ないことと関連していました。

対象: テレビ・ゲームなどメディア全般に関する57本の研究 / 限界: AIが広まる前の研究で、効果の大きさはどれも小さめです。

研究からわかる「対策のすき間」を、親が確認しやすい形にまとめると次のとおりです。

  • 年齢制限: 多くは自己申告。年齢を偽れば通れてしまう[3][5]。
  • AI側のルール: 友達役のAIは、性的な内容のルールがないものも多い(15個中8個にしかない)[3]。
  • 家庭のフィルター: ネットの性的な画像に対しては、効果が小さいか確認されなかった[4]。
  • 子どもの側: 性的・暴力的な話題を子ども自身が持ちかけていることがある。12歳未満ほど割合が高かった[1]。

03まだわかっていないこと

AIの保護者向け機能やフィルターが、AIの性的・暴力的な返答をどこまで減らすかを直接確かめた研究はまだない。日本の子どものデータもない。

  • AIの保護者向け機能や年齢に合わせた設定が、実際に子どもの体験を変えるか
  • AIとの性的・暴力的なやりとりが、子どもの心や行動に長い目で影響するか
  • 日本の子どもが、AIとどのくらい性的・暴力的なやりとりをしているか
  • 顔写真や身分証による厳しい年齢確認が、AIでどこまで効くか

04家庭で今日からできること

設定は最低限の柵として必ず使い、そのうえで「変な返事が来たら話してね」と伝える。叱らずに聞ける関係が、すき間を補う大切な手段になる。

1

使うAIと年齢の決まりを、子どもと一緒に確認する

子どもが使っているAIアプリの名前と、利用規約の対象年齢を一緒に見ます。友達役やキャラクターと話すアプリは、安全のルールが弱いことがあると伝えます。

目安 AIを使い始めるとき / 10分

2

端末とAIの保護者向け設定をオンにする

端末の機能制限や、AIの保護者向け機能があれば使います。ただし研究ではフィルターの効果は限られていたため、「これで安心」とは考えず、最低限の柵として使います。

目安 小学生〜中学生 / 15分

3

「変な返事が来たら、話してくれたら助かる」と伝える

叱られると思うと、子どもは話さなくなります。「話してくれたら怒らない」と先に約束し、話してくれたらまず「教えてくれてありがとう」と返します。

目安 全年齢 / 雑談の中で1分

4

「AIは頼まれると話を合わせてしまうことがある」と教える

AIは相手の話に合わせやすく、なりきり会話では性的な内容と暴力的な内容が重なって出てくることも多いと伝えます。気持ち悪いと感じたら、会話を止めて閉じていいと教えます。

目安 小学校高学年〜

子どもの様子がいつもと違う、性的な被害が心配といったときは、一人で抱えず、かかりつけの小児科や自治体の子育て相談窓口に相談してください。

AIチャットで子どもが何を話しているかは子どもがAIチャットで何を話しているか知っていますか?、家庭でのルールの決め方は子どものスマホルールの作り方と子どものAI利用、家庭でどう関わるとうまくいく?も参考にしてください。

05よくある質問

AIのフィルターや保護者向け設定をすれば安心?

安心とまでは言えません。家庭のフィルターを調べた研究では、ネットの性的な画像に触れる子を1人減らすのに15世帯以上がフィルターを使う必要があり、英国の調査では効果が確認されませんでした。設定は最低限の柵として使い、子どもと話せる関係を合わせて作ることが大切です。

AIの年齢制限は守られている?

すり抜けやすいのが実情です。人気のAIチャット25個のうち、年齢確認の仕組みがあったのは9個で、生年月日を入力するだけのものも含まれていました。オーストラリアのSNSの研究でも、年齢確認で最も多かったのは「年齢を聞かれるだけ」でした。

子どもがAIと性的な会話をしていたら、どうすればいい?

まず叱らずに、どんなやりとりだったかを落ち着いて聞きます。研究では、年齢が低い子ほどAIとの性的なロールプレイの割合が高い傾向でした。興味を持つこと自体を責めるより、AIは話を合わせてしまうことがあること、体や性のことは信頼できる大人に聞いていいことを伝えましょう。

何でも聞ける汎用のAIと、友達役のAIで違いはある?

違いがあります。性的な内容についてのルールがあったのは、汎用のAIでは10個中9個、友達役のAIでは15個中8個でした。子どもの利用データでも、友達役やロールプレイ向けのアプリほど性的・暴力的な内容が多い傾向でした。

出典

  1. Maheux, A. J., Boeldt, D., Akre-Bhide, S., et al. (2026). How US Youth Use AI Chatbots: Conversation Patterns From Naturalistic Keystroke Observations. Journal of Medical Internet Research, 28, e95819. https://doi.org/10.2196/95819
  2. Maheux, A. J., Akre-Bhide, S., Boeldt, D., et al. (2026). Generative Artificial Intelligence Applications Use Among US Youth. JAMA Network Open. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.56631
  3. Brewster, R. C. L., Zahedivash, A., Tse, G., Bourgeois, F., & Hadland, S. E. (2025). Characteristics and Safety of Consumer Chatbots for Emergent Adolescent Health Concerns. JAMA Network Open, 8(10), e2539022. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.39022
  4. Przybylski, A. K., & Nash, V. (2018). Internet Filtering and Adolescent Exposure to Online Sexual Material. Cyberpsychology, Behavior, and Social Networking, 21(7), 405-410. https://doi.org/10.1089/cyber.2017.0466
  5. Barnes, C., Hall, A., Mantach, S., et al. (2026). Assessing early effects of Australia's Social Media Minimum Age Act on adolescents' social media use: observational study. BMJ. https://doi.org/10.1136/bmj-2026-363695
  6. Collier, K. M., Coyne, S. M., Rasmussen, E. E., et al. (2016). Does parental mediation of media influence child outcomes? A meta-analysis on media time, aggression, substance use, and sexual behavior. Developmental Psychology, 52(5), 798-812. https://doi.org/10.1037/dev0000108