子どもに将来の夢がない。小学生で「なりたい職業」が決まっていなくても心配いらない理由

「将来の夢は?」と聞いても「特にない」「わからない」としか言わない。周りの子は宇宙飛行士やYouTuberになりたいと言っているのに、うちの子だけ何もないようで心配になる——そんな声はよく聞かれます。実は、子どもの「将来の夢」は、本人の中でもまだ固まっていないことの方が自然だと、研究は示しています。
3行でわかる
- 小学生の将来の夢は数年のうちに大きく変わりやすく、3年間で約6割が完全に入れ替わったという追跡調査があります。
- 身近な大人の職業からの影響は、年齢が上がるにつれて目立たなくなっていくことも分かっています。
- 親が見せる職業の幅や、性別にとらわれない関わり方が、子どもの選択肢を広げる手がかりになります。
01結論から言うと
小学生で将来の夢が無かったり、はっきりしなかったりするのは発達的にごく普通のことで、心配する必要はありません。
子どもは成長とともに、見聞きする職業の種類や、自分の得意・不得意についての理解を少しずつ広げていきます。小学生の時点での「夢」は、まだ固まっていない途中経過であることがほとんどです。
むしろ、早い段階で1つの職業に決め打ちするより、いろいろな興味を行き来すること自体が、この時期らしい自然な姿だと研究では捉えられています。
02研究とデータでわかっていること
小学生の将来の夢は数年で大きく変わりやすく、複数の職業に興味を持つ子どもがほとんどです。
Davenport・Padwick(2025、英国)[1]
英国北東部の小学校3校の児童78人を7〜9歳から3年間追跡した調査では、38%が同じ職業への夢を持ち続けた一方、60%は3年間で夢が完全に入れ替わっていました。約7割の子どもが複数の職業に興味を示していました。
対象: 英国の小学校3校の児童78人、7〜9歳から3年間の縦断調査/限界: 英国の一地域に限定された調査で、他国にそのまま当てはまるとは限りません。
Kvaløら(2021、ノルウェー)[2]
4.5〜6歳の幼児では、母親の職業の種類と、子ども自身が「人の役に立つ仕事」を望むかどうかに関連が見られましたが、6〜13歳の子どもでは同じ関連ははっきり見られませんでした。
対象: ノルウェーの親子、研究1は4.5〜6歳72組、研究2は6〜13歳106組/限界: 母親の職業にしぼった調査で、父親や他の大人からの影響は扱っていません。
Hassanら(2022、パキスタン)[3]
パキスタンの中等教育の生徒200人を対象にした調査では、親の影響がメディアよりも強く、性別に基づく思い込みを通じて、子どもの職業選択に影響していました。
対象: パキスタンの中等教育段階の生徒200人/限界: パキスタンの文化的背景に基づく結果で、中高生が対象のため小学生より上の年齢層です。
03まだわかっていないこと
日本の子どもを対象にした追跡調査はまだ少なく、将来の夢が「無い」こと自体の長期的な影響もよく分かっていません。
- 日本の子どもを対象にした、将来の夢の変わりやすさに関する縦断調査はまだ見当たりません。
- 将来の夢が「無い」「言えない」こと自体が、その後の進路選択にどう影響するかは、十分に調べられていません。
- AIの普及で職業そのものが変わりつつある中、子どもの職業イメージの形成がどう変化していくかは、まだ研究が追いついていません。
04家庭で今日からできること
「夢が無い」を問題にせず、好きなことから話を広げ、性別にとらわれず多様な仕事を見せることが助けになります。
「夢が無い」を問題にしない
「まだ決まってなくて普通だよ」と伝え、無理に答えを急がせない。
目安 小学生
好きなこと・得意なことから話を広げる
「将来何になりたい?」ではなく「どんなことをしているとき楽しい?」と聞いてみる。
目安 全年齢
性別にとらわれず、いろいろな大人の仕事の話をする
身近な大人の仕事の話をするときは、性別で決めつけた言い方を避け、幅広い選択肢を見せる。
目安 全年齢
05よくある質問
周りの子は将来の夢を持っているのに、うちの子だけ無いのは問題ですか?
問題とは言えません。研究では、小学生の将来の夢は数年で大きく変わりやすく、まだ決まっていないこと自体がごく自然な状態だと示されています。
子どもの将来の夢は何歳頃から固まってきますか?
研究によって幅がありますが、小学生のうちは夢が大きく変わりやすいことが追跡調査で確認されています。思春期以降、徐々に現実的な選択肢に絞られていくと考えられています。
子どもが将来の夢を見つける手助けをするにはどうすればいいですか?
「将来何になりたい?」と職業名を聞くより、「どんなことをしているときが楽しい?」のように好きなことや得意なことから話を広げる関わり方が助けになります。
出典
- Davenport, C., & Padwick, A. (2025). Making their minds up: flux and stability in young children's career aspirations in North East England. Humanities and Social Sciences Communications, 12(1), 1038. https://doi.org/10.1057/s41599-025-05364-z
- Kvalø, M., Olsen, M., Thorsteinsen, K., Olsson, M. I. T., & Martiny, S. E. (2021). Does the Stereotypicality of Mothers' Occupation Influence Children's Communal Occupational Aspirations and Communal Orientation? Frontiers in Psychology, 12, 730859. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.730859
- Hassan, M., Luo, Y., Gu, J., Mushtaque, I., & Rizwan, M. (2022). Investigating the Parental and Media Influence on Gender Stereotypes and Young Student's Career Choices in Pakistan. Frontiers in Psychology, 13, 890680. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.890680